ボクは初恋をまだ、知らない。
河原を少し歩いていくと、広場に出る。

薫と花岡くんのお気に入りの場所で、
小学校の頃からよくここで踊っていたらしい。

ボクはダンスが出来る訳ぢゃないので、
花壇の端っこに腰掛けて、
3人のダンスを見て楽しんだ。

「すげー!花岡くん相当上手い!」

「まだまだだよ!もっと練習しなきゃ!」

ダンスは見ること自体初めてに近かったが、
花岡くんはずば抜けて上手いのが分かる。

こうゆうのが、才能って言うんだろうか?

彼は多分、いずれ大物になりそうとゆう
キラキラ光るものを感じた。

「花岡くん、プロなると思う!」

「そんなに褒めないでー。
俺、叱られた方が伸びるタイプ。」

「確かに。あ、今ステップずれた。
見ーたーわーよー?」

花岡くんは普通に照れていた。
薫の言葉にギクッとしていて鋭い目線から逸らす。

「でも千影は、先見の明ある方だと思うぜ!
テレビでも良く、この芸人は売れていくって
言った人達ほどほんとに売れてったからな」

啓介は何故か自分の事のように、
誇らしげに語った。

「へぇ。なら尚更楽しみね!翔?」

「当たったらいいな。
俺、ダンサーになるの夢だから。」

「夢……かぁ。」

ボクの心に響いた、「夢」の言葉。

早くミシンが欲しい気持ちを思い出して、
なんだかそわそわしてきた。

「月村は?夢あるの?!」

花岡くんがワクワクした顔でそう問いかけてくれた。

「ボクは…もしかしたら、
見つかるかもしれないって所かな。
もうすぐミシン!誕生日プレゼントで
貰えるんだ!」

「「ミシン…?」」

3人が口を揃えてハモった。

「服を!作ってみたいんだっ!!
ボクの感性で、ボクらしいデザインで!」

言葉に出すと、楽しさが止まらなくなって来た。

「薫に貰った雑誌に載ってたようなスカート!
今はそれが目標なんだ!」

たった1ページとの出逢いから
生まれた創作意欲。

そこから、どんどん何かが芽生えるような
感覚が、ボクの心を掴んで離さない。

「だからもし!ボクがミシンを使えるようになったら、皆にも何か作ってあげる!」

皆に宣言するほど、
気持ちが溢れてくる…この感情はなんだろう?

花岡くんに触発されたボクは、
言いたい放題言い切って啓介を見ると
彼が突然、ぶわぁっと泣き出した。

「千影ぇ!お前がそんなイキイキと
夢を語る日がくるとは!
俺、感動しちまったあ!!」

「ええっ!?啓介は保護者か!?」

ちょっと、あからさまに大袈裟に泣いてる気もしたけれど、"真ん中の気持ち"ぢゃない。

素直に嬉しいとさえ思ってしまった。

「風見くん泣きすぎっ!
花嫁見守る父親みたいだね。」

「いいぢゃん、その夢。
なんかワクワクしてきた!」

あぁ、そうか…。
これが、「夢」なんだ。

ストン…と、腑に落ちる。
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