ボクは初恋をまだ、知らない。
「もういっちょ踊るか!」

「OK!ミュージックスタート!」

3人がまた、自由に踊り出す。

腰の動きがセクシーな薫。
ダイナミックなステップを繰り出す花岡くん。

そしてユーモアたっぷりノリノリの啓介。

ボクの目の前に小さな舞台が出来て
そこで自由に踊る姿に気分が高揚してくる。

ついにボクの足もリズムに乗ってきて、
たんたたんたんっ!と地面を鳴らした。

足だけでも、ダンスに参加してる
気分になって凄く楽しい…。

そんなボクの足のステップに、
花岡くんがじっと見つめて注目した。

踊りながらもチラチラとボクを見てきて、
やがて花岡くんのステップが止まった。

「…月村、なんか音楽やってた?」

「え??」

花岡くんの問いかけに、啓介と薫も足を止める。

放置されて流れたままの音楽が、
花岡くんの手によって曲が変わる。

「月村、立って!!」

「え?!ボク?!なに?」

花岡くんは、真剣な目でボクに指示をすると、
普通のHIP HOPから、ちょっぴり複雑な
リズムの曲調に変わった。

「この曲に合わせて、リズム取ってみて?」

「え…?さっきみたいに足でいい?」

「うん!!」

なんだか凄くキラキラした目でボクを見る。

ボクは言われるがままに、
右足をタンタンっ!と慣らしていく。

曲を聴き、音がボクの耳に届いて、

ビートを鳴らし続ける…。

「え、千影…おまえこんな特技持ってたのか」

啓介の声がそっと聴こえた。

ボクはノッてきて、
左足も混ぜて鳴らし始めた…。

「へぇ…翔。いい子見つけたね。」

薫がそう言う。いい子って?ボク……?

何となく褒められた気がしたボクは、
嬉しくてどんどん……どんどん
音楽の海の中に入っていく…。

ボクの足音と、刻まれていくビートが
シンクロしていくようだ…。

あぁ…なんだろう…凄く、心地良いや。

気づけばボクの口角が上がってる…。

「月村!!!」

ハッ!と我に返ると、
目の前にいた花岡くんの綺麗な顔が
目の前にあった……。

「はぅあぁっ!!?///」

ビックリして思わず、猫並の反射神経で
ぴょんっと後ずさりした。

「翔、近すぎて引かれてる…」

薫が突っ込んだが、花岡くんの視界と耳には今、
ボクしか見えていなかったみたいだ。

キラキラした表情のまま、
花岡くんはボクの手を取って言った。

「俺らとダンスチーム組もうよ!!」

ん………??

え?……え?今なんて…!?

「大事な事だからもっかい言う!!
月村!!俺らとダンスチーム組もうよ!!」

「ぇえええーっっ!!??」

静かだった河原の広場に、
ボクの声が響いた…。
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