ボクは初恋をまだ、知らない。

「…俺に壁ドンして欲しい…だと??!」

啓介は真顔でリアクションしてきた。

「うんっ!ほら、早く!!」

るなが傍で見守る中、
ボクは子供が親に抱っこをせがむように
啓介に両手を広げたが…

「んな恥ずかしいこと出来る訳ないだろ!?」

「いててててっ!!」

啓介はやっぱり啓介で、
ボクに軽めのプロレス技をかけてきた。

「啓介くんっ!!お願いします!!
ツッキーのトキメキの確認なんです!!」

るなが懇願してくれて、"トキメキ"のフレーズに反応した啓介がピタリと止まった。

「まさか千景、男に壁ドンされたのか…?」

相変わらず娘の心配をする親の目になったが、
さらりとボクは「そーだよ。」と言った。

真顔に戻った啓介。

るなが今日の出来事を語ると、
何となく状況を理解してくれたみたいだ。

「恋なのか確認ね。…まぁ、千景は確かに恋愛経験ねぇから分かるけど…手法が危ういわバカ。」

……してくれそうなので、

バカの言葉には目を瞑ることにした。

「ぢゃあ、その時のシチュエーションと少し合わせて啓介くんのタオルを使おう!!」

るながニヤニヤしながら再現に近づける演出を考えてくれた。
< 58 / 106 >

この作品をシェア

pagetop