クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。


「ゆる、ゆーる」


「へっ、」


「『へっ』じゃないわよ、昨日の停電、大丈夫だったの?」



名前を呼ばれて、ハッとすると、円が前の席に座ってこちらを向いて机に頬杖を付いていた。


「うちの寮、朝にやっと復旧してさ、みんなバタバタだったわ。ゆるのところは?」


熱を出した私のところへ、円がお見舞いに来てくれた日から、円は、何かが解けたみたいに私に遠慮なく絡んで来てくれるようになった。


それがすごく嬉しくて、最近は教室にいる時間もすごく楽しい。


正直、今日は特に、あの特別寮に帰りたくないかも、なんて思っているし。


「ちょっと、ゆる?」


「あ、うん、ごめん、台風ね!うちも停電して大変だったよ……朝には復旧してたから大丈夫だったけど」


少し不機嫌そうに名前を呼ばれてしまって慌てて答える。


台風のことよりも、今は早凪くんのいとこの莉々ちゃんの存在で頭がいっぱいで。


こんな気持ち初めてで、どうしていいのかわからない。


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