クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。
「なんかあったの?」
「えっ、ううん!な、なんでもないよ!」
「あそう。ってかそれよりも!夏休み!」
本当は、円にもう少し踏み込んで聞いて欲しかったな、なんて贅沢なことまで思ってしまって。
ほんと、自分が自分じゃないみたい。
それに、早凪くんのこと好きな円が、私のこの気持ちをどう思うか。
ううん、そんなの考えなくてもわかる。
絶対よく思わないよね。
正面で、なにやら楽しそうにスケジュール帳を見つめる円に目線を向けると、円が口を開いた。
「あのね、夏休みは基本、寮にいる子たちは実家に帰るのね」
「え、あ、うん」
「それで、私ももちろん帰るんだけど、ゆるさえ良ければ、お泊りに来て欲しいなって!ここら辺の街のことだって、まだよく知らないだろうし、私が案内してあげる!」
「え、い、いいの?」
円のまさかのセリフに驚いて、目を見開いてパチパチと瞬きする。
「いくら特別寮のメイドでも、夏休みぐらい、暇な時間できるでしょ?付き合ってあげてもいいけど?」
「円……」
円のツンデレ発言が、私のモヤっとしてた心を優しく包んでくれる。
嬉しくなって、「ありがとうっ」とめい一杯の笑顔で返した。