クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。


「はい……早凪くん」


冷ましたたこ焼きを彼の方に向けて差し出すけれど、さっきのように突然起こったこととはまた違って、


自分からしてあげるのもなんだか恥ずかしくて、顔があまり見えない。



「ん、うまい」



満足そうな彼の声が聞こえて、手を引き戻すと、



「次は俺の番」



そんな声が聞こえて顔を上げると、早凪くんがたこ焼きを持ってこちらを見ていた。



「えっ、」



「ほら、“あー”」


早凪くんがそう言って、こちらにたこ焼きを差し出してくる。


ううっ。


みんなの見てる前でこんなこと……恥ずかしいよ。


でも……。


私の口は限界寸前。
たこ焼きが食べたくて仕方がない。


ここで変な断ったりすれば、またなんとなく時間がかかる気がして、私はゆっくりと、控えめに口を開けた。



パクッ。



早凪くんに冷まされたたこ焼きは、とても食べやすい温度で。


ソースとだし入り生地の相性は抜群なのはもちろんのこと、かつお節とほんのりタコの風味と食感も、もう何もかもがほんっとうに最高で。


< 87 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop