クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。
「はい……早凪くん」
冷ましたたこ焼きを彼の方に向けて差し出すけれど、さっきのように突然起こったこととはまた違って、
自分からしてあげるのもなんだか恥ずかしくて、顔があまり見えない。
「ん、うまい」
満足そうな彼の声が聞こえて、手を引き戻すと、
「次は俺の番」
そんな声が聞こえて顔を上げると、早凪くんがたこ焼きを持ってこちらを見ていた。
「えっ、」
「ほら、“あー”」
早凪くんがそう言って、こちらにたこ焼きを差し出してくる。
ううっ。
みんなの見てる前でこんなこと……恥ずかしいよ。
でも……。
私の口は限界寸前。
たこ焼きが食べたくて仕方がない。
ここで変な断ったりすれば、またなんとなく時間がかかる気がして、私はゆっくりと、控えめに口を開けた。
パクッ。
早凪くんに冷まされたたこ焼きは、とても食べやすい温度で。
ソースとだし入り生地の相性は抜群なのはもちろんのこと、かつお節とほんのりタコの風味と食感も、もう何もかもがほんっとうに最高で。