だから何ですか?Ⅲ
ザーザー、ザーザー、よく降るもんだ。
聴覚にも視覚にも嗅覚にも感じる雨の存在感は決して心地が良い物とは思えない。
傘からはみ出した肩の部分は濡れた跡が広がり、足元ではズボンの裾が生温く湿って気持ち悪い。
そんな自分が身を置くのは高城の会社の前で出勤時間のそこはさっきからひっきりなしに社員が通る。
当然の事ながらみんな吸い込まれるように社内に入っていって、それを壁に寄りかかり眺めている俺を不審な目で見る人間もちらほら。
その内警備を呼ばれてもおかしくないかもな。なんてことを思えどその場に留まる。
雛・・・また怒ってるだろうな。
容易に想像のつく姉の憤怒の姿に、触るとまだ痛む頬を撫でて苦笑い。
昨日から『絶対安静!』と煩い程繰り返されていたというのに、早朝に目を覚ますと音を立てずに家を抜け出した。
いい歳した大人がする脱走劇じゃねぇな。と今でも思うけれどこうでもしなきゃ絶対に外出なんて認めてもらえないだろう。
勿論自分のモラル的にも会社を病欠しているくせに何をしているんだという意識はある。
でもモラルを捨て置いてでも今はこちらを優先したかったのだ。