だから何ですか?Ⅲ
相変わらず仕掛けてくるくせに勢い負けの余裕の無さ。
すぐに上がる息と下手くそな息継ぎと。
全然変わってない。
俺の知っている亜豆のまま。
ああ、でも今日は俺もなかなかの酸欠。
いつもであるならまだ余裕をもって亜豆を翻弄せんと呼吸を奪うだろうに。
さすがに自分が苦しいと僅かに目を細め、それでもゆっくりと余韻たっぷりに唇を離せば、ようやく得た酸素を貪り『はぁっ』と熱い息を吐いた亜豆が赤く微睡んだ顔につーっと涙を滴らせる。
生理的なものなのか感情的なものなのか。
どちらにせよ・・・欲情を煽るようなアクセサリーの装着の様だ。
息が上がっているのはこちらも同様。
それでも亜豆程ではなく、確かに発熱し熱いのはこちらの方であった筈なのに、そんな俺が触れても熱いと感じる亜豆の頬は見事なまでの紅潮。
微睡む目にはまだどこか貪欲がチラつき、物足りないと表情が訴える。
口の端から零れ伝った唾液の跡すら愛おしいと指先で拭ってやった次の瞬間、
「・・・っ・・狡い、」
「・・・・何がだよ、」
「っ・・・謝りに・・・・ただ、それだけのつもりだったのに。・・・『言いすぎました』『すみません』その言葉だけを落としてサラッと帰るつもりだったのに」
「・・・・・・」
「なのに・・・嫉妬させて、心配させて・・・私の平常心を崩す様に『殺すな』・・とか、」
「・・・・・・」
「っ・・・名前を呼ぶなんて・・・狡い」
「・・・・・凛生、」
「またっ、そんな・・・本当に死にそうな声で呼ぶなんて狡い、」
「・・・凛生、」
「っ~~~・・・・」
「凛生、」
なぁ、妥協策だ。
どうしても、突き崩せねぇっ根っこがあるって言うならさ、
あの時みたいに・・・、
「・・・・・会いたかった」
「っ_____」
こっそりと隠す様に、秘め事の様に耳に直に吹き込んだ感情。
再会した時にも同じ感情を吐露した。
心底、狂おしい程恋しかったのだと。
そんな俺に確かに言ったじゃねぇか。
隠す様に、秘め事の様に、
夢と現の間に隠す様に。
「っ・・・私も・・会いたかったです・・よ」
だろ?
安心しろ・・・また、隠したままでいてやるから。