だから何ですか?Ⅲ
「っ______はっ・・・」
「何かいるもんあったら声かけなさいよ〜?」
「っ〜〜」
「・・・分かったよ」
俺の声が掠れ息がやや上がっているのはいくらでも熱のせいに出来るし、雛もそう思っているだろう。
実際は更に熱も息も上がりそうな行為に没頭して、組み敷いた亜豆が必死に声を殺す様を恍惚と見下ろし満喫しながら会話をしていたわけで。
遠くでパタリとリビングの扉が閉まる音がする。
それは亜豆の耳にも届きようやく気が緩んだのか、
快感の痺れがこちらの身体にも伝わる。
涙でとろける目の美味そうな事。
最早どっちの熱に浮かされてるんだ?と、自分でも判断がつかない。
はっきりと言えるのは・・・、亜豆が好きだという感情ばかり。
俺の・・・モノ・・・。
「っ・・・ダ、・・つけないで!ダメッ」
「っ・・・・」
何食わぬ行動だった。
いつもであれば待ったをかけられる事もなく、無意識の内にそれを刻む様な。
独占欲が疼き軽く肌に吸いついた瞬間に冷静さの回帰。
駄目だと拒絶の声が響き、同時に俺を押し返した力は本気の抵抗。
驚愕に見下ろす亜豆はまだ余韻たっぷりに顔も赤く目にも涙を浮かべているというのに、俺を見つめ上げる芯はすでに理性的な色に変わっている。
「なっ・・・」
「ダメ・・です」
俺が言葉を発するより早く再びの拒絶の言葉が口から響き、追い打ちをかけるように?
シンっと絶妙に出来上がった静寂の空気に震えて響くバイブ音。
それの音は冷静さを更に回帰させたらしく、視線すらこちらから外して部屋の隅に雑に放ってある鞄に集中する。
「・・・帰ります」
まるで未だ鳴る着信の相手が誰か分かっていて、更にはそいつに呼ばれているかの様な唐突さ。