だから何ですか?Ⅲ
「__ずき・・あーずきっ、」
何度目の呼びかけか。
ようやくハッとしてこちらに戻った意識と視線に小首を傾げつつもクスリと笑う。
場所はすでに定着しきった屋上の喫煙スペースだ。
いつものようにお互いに連絡を取り合わずとも同じ頃合いに足を向けて、どちらが先でも変わりなく隣り合って煙草を噴かす。
ポツリポツリ話す内容も他愛のない世間話から仕事の事まで。
毎日こうしていてよくもまぁ飽きないものだと自分でも思ってしまう程の日々。
でも・・・飽きないんだよなぁ。
むしろどんどん馴染んで安定する。
話の途切れに煙草を吸って、晴天の空を見上げながらそんな事を思い和んでいた時間。
同じように隣で音を発さずに煙草を噴かす姿に意識を戻したのは特別意味はない。
それでもどこか意識お留守な遠い目の横顔が変に気になって、『亜豆』と呼んでみたけれど反応がない。
そうして数度軽めに呼び続け、最後に先程の様な呼びかけで意識の引き戻しに成功したのだ。
「どうした?考え事か?」
「・・・ちょっと・・・仕事の事を」
「休憩時間に勤勉な事で」
「伊万里さんだって度々仕事の事でボーっとしてるじゃないですか」
「仕事大好き~で生きがいだからね」
「・・・・妬けますね」
向けられた言葉に焦るでもなくドーンと構えてむしろドヤ顔。
確かに最近は恋愛にも重きを置いてはいるけれどやはり仕事が好きな事も否めない。