だから何ですか?Ⅲ
むしろそれを自慢と思っている様に切り返した口元は自然と笑う。
そんな俺に呆れるでも見放すでもなく、クスリと仕方なく、それでもようやく愛らしく笑った亜豆が『妬ける』と零す事にも小さく笑った。
「で?今日はどこで飯食う?」
「あ、・・・まさにそれも含みで思い悩んでいたんですが」
「はっ?」
「今日、急遽代打で夜のパーティーに付き添わなくてはいけなくなりまして」
「うわぁお・・・それはまた気の毒な」
「担当するはずだったお姉さまがインフルエンザだそうです」
フゥッと吐きだされた溜め息は『やれやれ』といったものだろうか?
普段無表情の亜豆があからさまに面倒くさそうな顔をするのだからよっぽど面倒なんだろうと苦笑いしか浮かばない。
だからなのか自分も確かに『チェッ』と不満が浮上したはずなのに言葉にはならず、不満げな亜豆の頭をポンポンと撫でて宥めておく。
そんな俺の対応に絆されたのか、
「・・・・パーティーとか嫌いです」
「ハハッ、っぽいな。いいじゃねぇか。タダ飯タダ酒飲んでくれば」
「仕事ですよ?しかも秘書が大っぴらにそんな事出来ると思います?」
「付き添うのが海音なら平気じゃねぇの?」
「・・・・・・はぁ・・・行きたくない」
「・・・・」
やっぱり、珍しいと思うべきなのか?
普段どんな過労の仕事でもぼやくことをあまりしない亜豆のこんな不満は。