だから何ですか?Ⅲ
そんな刹那、亜豆がその口を開くより早く空気に震えたのは携帯のバイブ音。
ヴー、ヴーっと存在感示すそれに亜豆との繋がりを見せつけられている様な感覚にすら陥る。
鳴り続ける携帯を取り出し表示を確認する亜豆もやはりしっくりこねぇ。
やっぱり、なんか違和感だ。
「・・・なんで、お前があいつの会社にいるのか知らねぇけど。・・・もしかして、何かされてんじゃねぇの?」
「・・・・・」
菱塚を辞めてまで高城に移った理由も、
俺を好きだといいながらも他を優先する事も、
鳴った携帯にいちいち反応する理由も。
全部・・・させられてるんじゃねぇの?
「されてませんよ」
「・・・・・」
ようやく響いた亜豆の言葉は俺の問いへの否定の言葉。
その視線はまったくブレず、やましい事なしに見つめ抜いてくるものだから・・・困る。
『そうです』と、言って欲しかったから困る。
そんな俺を更に追い詰めるように吐き出されたのは溜め息で、
「何か・・・色々と勝手に思い込んで話がどんどん進んで置いてきぼり感満載なんですが。
まず、社長からの着信とは私一言でも言いましたか?」
「違うのかよ?」
「そうですけど」
「そうなんじゃねぇか。何シレッと、」
「だとしても、それこそ伊万里さんには関係のない話ですよね?それによくお考えください?社長からの着信を蔑ろにして秘書が務まりますか?」
「そ・・れは、」
「言っておきますが、私菱塚にいた頃も仕事に関してはきちんと電話対応しておりました」
クソッ、真顔の正論に返す言葉が無くなってきた。