だから何ですか?Ⅲ



ほら、こんな些細な刺激にも感じて欲して表情を崩すくせに。



「っ・・・」



言っちまえって。



「・・・伊万里さ」



「・・・・あまり、ウチの秘書を苛めないでもらえるかな」


「っ・・・・」


「・・・・・」



不意に介入してきた声音は一度しか聞いた事がないのに嫌に記憶されている。


自分の背後から響いた声に思わず口から出そうになった舌打ちを飲み込んで、瞬時に浮かんだ眉間の皺をなんとか伸ばしてようやく振り返る。


そうして視界に捉えたのは相変わらず無害さを強調するように低姿勢に微笑む高城の姿で、そんな反応にも苛立ちは浮上するのに追い打ちをかけるように俺の横をすり抜けていく亜豆の姿に更に加熱。



「おはようございます、社長」


「うん、おはよう。今日は朝から会議だよ?勤勉な筈の亜豆なのに」


「すみません。すぐに準備に取り掛かります」



カツカツと逃げるような靴音が向かって止まるのは高城の隣で、さっきまで確かに俺が独占していた筈の視線や意識が今は高城の存在に掻っ攫われてこちらに微塵も戻らない。


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