だから何ですか?Ⅲ
少し前まで不愉快であった筈の存在が今ではどこか同志の様な距離間を感じているのだから不思議なものだ。
こいつとも今度ゆっくり話してみたいことも結構あるんだよな。
亜豆の事でわだかまりある関係から始めてしまったけれど、本来職種も同じクリエイターで共通の話題もある筈なんだ。
落ち着いたら誘いでもかけてみよう。なんてことを思いながら三ケ月の笑い声を聞き収めていたけれど。
「で、何の用だよ?」
『ちょっとね、真面目な話』
「真面目?」
『今ね、菱塚に来てんの』
「はっ?菱塚?何で?」
『伊万里君も今から来れない?』
「はっ?いや、病欠で休んでんのに?」
『ストーカーしてるほど元気じゃん』
「いや、まぁそうだけどな」
でも、もう少ししたら昼休憩で亜豆に会えるかもしれねぇってのに。
思わず確かめる様に建物を振り返り時計を確認して。
ここまで数時間退屈に耐えたのに。と、どうあっても諦めきれない様な感覚に満ちて誘いを蹴るつもりで口を開きかけた刹那。
『足らないピースが埋まるかもしれないよ』
機会越しに耳に吹き込まれた言葉には一瞬でこの場への名残惜しさなど吹き飛んだ気がする。