だから何ですか?Ⅲ
最後の最後まで向けられるのは嘘偽りのない物だった。
『好きです』
あの響きでさえも。
それでもきっと俺はその全てを理解して見ていたわけじゃなくて。
見ていた一角を全てだと思い込んでいたんだ。
始まりからきっとずっと・・・。
そんな俺に、もしかしたらずっともどかしかったのは亜豆の方だった?
俺から優位を取って楽しんでいるのかと思った。
自分の好意の方が勝るのだといつまでもしてやられる俺をからかって笑って・・・それが・・・出来上がった俺たちの関係なんだと思ってた。
でも・・・・・違った?
「っ・・・・・駄目だ。やっぱり・・・納得いかねぇよ」
感情が高まりすぎ冷静な判断に欠けていた少し前の衝撃的な時間。
『さようなら』と言葉を響かせ去っていく亜豆を追いかけることも出来たのにしなかった。
あの時は本当に自分の感情が迷走しすぎていて、何をどうしたいのかも分からなかった。
でも、こうして冷静さが回帰し始めればやはり納得のいく別れではなかった。
「・・・話さなきゃ」
ぽつりと零した結論。
それに弾かれるように立ち上がるとゆっくり歩き始める。
雨脚は強くなく、未だにポツリポツリと肌や服を濡らす程度。
俺の心同様に中途半端と言えるそれには笑う力も本当は回復しきってない癖に苦笑。