だから何ですか?Ⅲ



雛の職業は地元で小さなカフェを経営。


名刺を扱うような職業じゃなく、あきらかに私物ではないと理解する。


赤いレザーに黒のステッチ入りの名刺入れは女性ものだろうか?



「何?落とし物でも拾ったのか?」


「んーん、落とし物は落とし物なんだけどね。ほら、あんたの病院に急いでた時にね、タクシーに乗ろうと思ったのよ。で、駅前に丁度一台しかいなくてさー、しかも直前で他の人が乗ろうとしてたから『待って~』って走ったら人とぶつかっちゃって」


「どんくせぇ~」


「あんたの為に急いでたんだっつーの」


「で?」


「そん時にお互いの荷物ばらけちゃってさぁ~、『すみません』って言いながら拾ってその時にこっちに紛れちゃったのね。後々鞄確認してビックリよ」


「ふーん、」


「でも、良い子だったのよ~。ほら、私擦り剥いちゃったんだけど絆創膏くれたし、次いでにタクシーも違うの呼んでくれたの」


「で?どこの会社?場所は?」


「あ・・・えっと・・・TSC株式会社?」


「TSC・・・・高城か?ちょっと名刺貸して」



俺の知っている場所であるなら大手の会社だと記憶されている。


その記憶と照らし合わせようと、雛が持っている名刺を渡せとチョイチョイと指先を動かし手を差し出す。



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