だから何ですか?Ⅲ


まだ頭が回らない。


もしかしてまた俺の都合のいい夢なのではないだろうか?


頭を強く打ちすぎて昏睡状態での都合のいい夢の世界。


でなきゃこんなおかしな・・・奇跡的な巡り合わせなんてあるもんか。



「で?どうやって行くべき?電車乗り継ぎかなぁ?」


「っ・・・そ・・だな。ちょっと・・調べてやるよ。タブレット、タブレット・・」



雛の声掛けで我に返ると平静を装い『仕方ねぇな』という感じに腰を上げる。


寝室にあるタブレットを取りに何食わぬ感じで廊下へ。


そんな俺に疑いもなく『サンキュ』と言いながら自分の荷物を確認している姿に安堵。


そんな姿を残しリビングの扉を閉め廊下に身を出すと、恐ろしく素早く上着を羽織りながら玄関に向かい靴をつっかけたまま外へと飛び出した。


ああ・・・絶対に帰ったら殺される。


これが俺の都合のいい夢でなければ。


エレベーターのボタンを連打して、今にも追いかけ捕まえに来るのでは?と背後を気にして。


それでも都合よくすぐに開いた小箱に乗り込み急下降。


そこからは無我夢中。


足がもつれるのは夢の焦らしか、現実の自分の体調不良か。


こんなに息乱し走っているのに微塵も苦しいと思えない。


いや、苦しい。

苦しいけれど、この1ヶ月半のヒビの息苦しさに比べたら苦しいに値しない。



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