だから何ですか?Ⅲ
そんな愛想に感情が高ぶったまま、
「亜豆。っ・・・えっと、・・あ、秘書・・課?の、亜豆凛生に取り次いでもらえませんか?」
「秘書課の亜豆ですね。では、お客様のお名前と失礼ですがご関係をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「えっと・・・知人です。忘れ物届けにきて」
「お名前は?」
「・・・伊万里です」
「伊万里さまですね。少々お待ちください」
終始笑顔で対応し、受話器を取り内線を繋ぐ姿に形ばかりに笑みを浮かべる。
それでも内心は葛藤に満ちていて。
降りて来てくれるのだろうか?
止むを得ずに馬鹿正直に名前を告げた。
もし俺に会いたくないのならいくらでも理由をつけて拒絶するだろう。
そんな不安ばかりが次々に浮かんで、そんな間にも慣れた口調で取次を為している目の前の女。
『そうですか』『わかりました』そんな主語が見えない会話にも只々緊張して待っていると、目の前で静かに受話器を置いた姿が、
「申し訳ありません。亜豆は只今外出中でして、社の方に戻る時刻もはっきりと断定は出来ないそうです」
「そ・・・ですか、」
うっかり、『本当に?』と問い詰めそうになった。