だから何ですか?Ⅲ





居る場所がわかっただけ進歩じゃねぇか。と、自分に言い聞かせ、諦めさせる様にタクシーに視線を戻した。


刹那、



「・・・・・亜豆、」



カツン・・・と、ヒールの音が懐かしく耳に感じた。


俺が呼ぶまでもなく真っ直ぐに見つめ抜いてくる眼差しが懐かしい。


そんな瞬間に時間が止まっていたのは俺だけらしく、亜豆が降りたタクシーは静かに走り去っていなくなってしまった。


でも、どうでもいい。


だって、

やっぱり・・・、

コレは・・・夢・・か?



「・・・伊万里さん?」


「っ・・・」



その声で呼ばれたかった。


相変わらずだ。


相変わらず・・・その無表情は動じないんだな。


嫌悪とか憤怒とか、そんな反応を想像していた自分が馬鹿みたいに思える。


驚愕は僅かに目に揺らした程度の刹那の物。


すぐに記憶に鮮明な【いつもの亜豆】で軽く小首を傾げる意図は『何でここに?』とさらりとした疑問に感じる。


そんな反応には蓄積されていた疑問とか不満に着火して、弾かれた様に亜豆の元へと一直線。



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