星空電車、恋電車


「・・・しかし、よく食ったな」

うんうんと頷こうとしてやめた。
あまり頭を揺らさない方がいい。イケナイものが出そう。

「京平先輩が煽るから」
「煽ったのは水口だろーが」

はぁー。
どうしてこの人相手だとムキになっちゃうんだろう。
不毛な言い合いをやめて頬杖をついた。

「・・・なぁ」
隣で少しおとなしくなった京平先輩が話しかけてくる。

「はい?」

「樹にお前と出会ったってこと言っていいか?」

私の様子をチラチラとうかがいながら「なんか黙ってるとあいつに嘘ついてるみたいで気持ちが悪いんだよ」とストローの袋をもてあそんでいる。

あー、そうだ。この単純な人に秘密なんて厳しい要求だったわ。

「言いたかったけど、今まで我慢してくれていたってことですか?」

「そーだよ。この間お前と約束したろ」

そうだけど。
私との約束なんて破ろうと思ったら破れるのにこの人はそうしなかったんだ。

「京平先輩ってやっぱりいい人ですね」
うっすらと笑うと京平先輩は目を丸くした。

「水口にほめられる日がくるとは」

「大人になったんだなって感心してるんですよ」

「やっぱバカにしてんだろっ」

「へへっ。バレたか」
けらけらと笑うと京平先輩も苦笑いをした。

「もう樹先輩に言っても構いませんよ」
そう言うと「いいのか?」と身を乗り出して食いついてきた。

「会ったんですよ。樹先輩と。二か月くらい前に」

ええ?と驚く声が隣から聞こえる。

「二人で話しました。だからもう秘密にしなくて大丈夫ですよ」

「・・・俺、樹からなんも聞いてない・・・」

京平先輩は軽くショックを受けたみたいで動きが止まってしまった。

何なのよ、その反応。

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