星空電車、恋電車
もう少しでバレンタインデーという頃、また京平先輩からラインが入った。
『14日何してんの?』
『バイトですけど』
『俺、合コン』
『ふーん、がんば』
『本気でそう思ってないだろ。で、お前は誰かにチョコあげないの?』
『あげますよ』
『え、好きなヤツでもできたの?』
『違いますよ。全部お世話になってる方々へです。もちろん京平先輩のはありません』
『ひでえ』
『センパイこそ、今年は本命チョコもらえそうですか?』
『ああ、10個はカタイな』
『ヨカッタデスネ』
と、しょーもない話をして終わる。
ガキか。
あの人、4月生まれだからもうすぐ21歳になるはずなんだけどね。
翌日またラインが来た。
『やっぱ、俺にもチョコレートくれ』
は?何言ってんだ、この人。
『本命チョコもらえるんでしょ、10個も』
10個を強調して返事をしてやる。
『そうだけど、義理チョコも欲しい。特に水口の。俺はもらう権利があると思う』
『?』
『前回の合コンの後、送ってやった』
いや、確かにあの時の帰り道はアパートまで送ってもらいましたけど。それ何ヵ月前の話だ。
あの日、二人とも食べ過ぎてお腹が重くてなかなか立ち上がって動くことが出来なくなり。
あのスポーツバーでそのままだらだらと時を過ごしてすっかり遅くなってしまい、夜道は危ないからと京平先輩が送ってくれたのだった。
『あの恩を義理チョコで返せと?』
『そう。それ』
ちっ。
仕方ないか。今後ずっと恩着せがましくされてもなんだし。
わざわざ届けるのもメンドクサイから『前日も当日も翌日もバイトなんで先輩の都合のいい時に私のバイト先に取りに来てください』と京平先輩をバイト先に呼びつけることにした。