星空電車、恋電車
「なんだよ、俺の勘違いだったのか」
俯いたままの樹先輩からくぐもった声が聞こえる。

どうして私が樹先輩から京平先輩のこと好きだなんて思われていたんだろう。
好きどころかいつも樹先輩を独り占めしている京平先輩にジェラシーを感じていたくらいなのに。
どんな勘違いなの。

「---千夏」

不意に樹先輩が顔を上げた。

離れた外灯の明かりだけという暗がりの中、私と樹先輩の目がぴたりと合った。

「お互い忙しくてあんまり一緒にいられないかもしれないけど・・・俺と付き合わない?」

樹先輩が真っ直ぐな視線を私に向けている。
これ、本当?本気?真剣に言ってる?

驚きで身体が固まり、声も出せずにいると
「千夏はいつも京平のこと目で追ってると思ってたからなかなか言い出せなかったんだ。千夏は俺が相手じゃ嫌かな」
自信なさげな樹先輩の声がする。

「追ってません!追ってません。追ってませんよ。京平先輩のことなんて見てません。私が見てたのは・・・いつも樹先輩なんですっ」

京平先輩のことを否定したいがために声を張ったら、そのまま告白もどきになってしまったことに気が付いて私の背すじに冷たいものが流れる。

きゃー!
言っちゃった。言っちゃったよ。
こんなタイミングでっていうか、告るだなんてそんな大それたこと考えてなかったのに、思わず言ってしまった!
なんてことを!

樹先輩はえ?って顔してるし。

どうしよう。
恥ずかしすぎる。ここから逃げたいっ。
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