星空電車、恋電車
ーーーカウンターに並んで座り、牛丼をかき込んでいてふと思った。

あの頃もこうして一緒に牛丼食べたことあったな。

部活のメンバーと8人ほどで大会の帰りに寄ったんだけど、その頃はまだ樹先輩と付き合っているわけじゃなくて。
私は樹先輩の隣に座りたかったのに、樹先輩の隣に座るのはいつもこの京平先輩だった。
そんな事もあって、いつも京平先輩は私のライバルだった。

「あ、忘れるとこだった」

ごそごそと京平先輩がポケットの中から出してきたのは手のひらにちょこんと乗るサイズのかわいいブルーの小箱。

「バレンタインのお返し」
ほれほれ受け取れと押し付けてくるので「ありがとうございます」と受け取ったけれど、なんだかちょっと高そうに見えるのは気のせいじゃないだろう。

「開けていいですか?」リボンを外すと
「返事する前に開けてるんだから聞くなよ」と苦笑された。

箱の中から出てきたのはかわいい雪の結晶のような形のブローチだった。
キラキラしているのは・・・まさかスワロフスキー?

「素敵なんですけど、私がこんな高そうなものをもらってもいいんですか?」

ブローチを手に取ってまじまじと見てもやっぱり安いものには見えない。

「あー、いいんじゃね。チョコレートうまかったみたいだし」

は?うまかったみたい?
みたいってなんだ、みたいって。

こっちを見もしないで牛丼に食いついている京平先輩の顔をガン見する。
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