星空電車、恋電車
「ん、なんだよ。そんな見たってこれ以上なんも出さねえぞ」

「うまかったみたいって何ですか。みたいって。チョコレートは誰かにあげたってこと?京平先輩は食べてない?」

「あ?そりゃ、いっ…」
一瞬やばいって顔をしたけど、すぐに「もちろん俺が食ったけど。誰からももらえない可哀想ない、いとこがいてさ、ソイツに味見させてやっただけ」
取り繕う感じがすごい。
なんですか、そのめぐんでやる感。

「これも、ホントに先輩から?」

疑いながら手のひらの上の明らかにセンスのいいブローチをしげしげと見ていると、
「そーだし。いらないなら返せ」と取り返そうとするから慌てて身体の後ろに隠した。

「いらないとは言ってませんけど」

京平先輩はそんな私にふんっと鼻から息を吐き、また牛丼にかぶりついた。

これ以上聞いても返事をする気がなさそうだし、ブローチは綺麗だし、例え誰かがチョコレートを食べていたとしても構わない。

「ありがとうございます。大切にしますね」
箱に戻しリボンもかけなおしてバッグの奥に入れると、京平先輩がニヤニヤしながら見ていた。

「気に入った?」

「もちろんですよ。意外とセンスいいんですね、京平先輩って」

「そーだろ。いいセンスだろ」

「ほんと、意外でした」ふふっと笑うと京平先輩も満足そうな顔をした。
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