星空電車、恋電車
私が今夜の約束をしている相手は何と、あの山下さん。

山下さんと恵美さんの2人の交際はその後も非常に順調で、卒業後二人とも東京で就職をし今は一緒に暮らしている。結婚を見据えての同棲なんだとか。

神戸で就職した私が山下さんと会うのは2年振りで、山下さんから出張で神戸に来るからと連絡があり食事に誘われたのだ。
相変わらずイケメンなんだろうなあ。


仕事が終わり、山下さんが予約してくれた港の近くの海鮮ビストロに向かうと、もう山下さんは到着していた。

「お待たせしました」
急ぎ足で山下さんの向かいの席に腰を下ろす。

「いや、千夏ちゃんは時間通りだから気にしないで」
そう言ってニコリと爽やかな笑顔を私に向けてくれた。

ううう、相変わらず山下さんの笑顔は心臓に悪い。

あの頃よりも年齢が増した分落ち着きが出ていて、大人の色気というか何かやばいものが漏れ出している気がするよ。

山下さんは見事に洗練されたスーツの似合う大人のオトコへと変貌を遂げていた。

アイドルみたいにキラキラしていたあの頃と比べると年齢を重ねただけではない自信と落ち着きのようなものが見える。

このお店の中にいる女性客がチラチラと山下さんの様子を窺うように見ている。
きっと前よりどこに行っても注目の的なんだろうな。

「相変わらずのイケメンオーラですね。なんか神々しい」

「千夏ちゃん、君のそれって全然褒めてないよね。相変わらずで安心したよ」

くくくっと山下さんが小さく笑う。

「だって、山下さんと一緒にいると私まで注目されちゃうから結構なストレスなんです。今だってあんなイケメンの待ち合わせの相手ってどんな子なんだろうってみんな思ってましたよ。私が現れてきっとがっかりされてる」

「そんなことないさ」

「ありますよ。恵美さんみたいに綺麗だったら山下さんと並んでも釣り合いよくてお似合いだから誰からも文句言われないでしょうけどー」

そう言って口を尖らせると、山下さんが笑いを深めた。

「恵美は本当に綺麗だけど、千夏ちゃんは千夏ちゃんで恵美と違うタイプの美人じゃないか。久しぶりに会って、大人になったなって俺も驚いてるんだぞ、これでも」

「よく言いますよ。でも、褒めてもらったから非常に気分はいいです」
ケラケラっと笑うと
「そういうところは変わってなくて安心した」
と山下さんはまたキラキライケメン笑顔を見せてくれた。

昔はバンビちゃんと言われた私も程よく肉はついたし、日焼けで真っ黒だった肌も少しは白くなった。髪だってショートじゃなくてセミロングだ。
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