星空電車、恋電車
「俺、高校卒業する直前に偶然これに乗った」
懐かしいなぁと樹が言い出した。

「え、乗ったことあるの?」

「そう。実は『空色電車』の方も乗ったことあってさ。学校で両方乗ったって言ったら、通勤通学で毎日使っていても乗れないからかなり珍しいって。同級生にも羨ましいって言われたよ」

ちょっと自慢気な樹に私も両方乗ったことがあるとは言い出しにくくなってしまった。
でも、そうなのか、やっぱりこれってレアなんだ。

二人並んで空席に座ると不意に樹の顔が耳元に寄せられた。

「『星空電車』って願い事が叶うって言われてるだろ。だから、それに乗った時に千夏に会いたいって願ったよ。
こっちの恋電車の時は、千夏とまた恋愛したいって願った。
それから留学先のフィールドワークで流れ星を見る度に今度は千夏を取り戻したいって願ってた。---強く思えば願いは叶うもんだな」


ーーー樹は囁いて私の耳に軽く掠めるようなキスをした。
途端に私の顔からは火が出た。


2年前に再会した樹は高校生の樹先輩とは別人のようになっていて、私への感情を隠さないし、スキンシップも超過多。

あの頃の樹先輩はこんな所でこんな事をする人じゃなかった。
耳元で囁くとか電車に乗っても手を繋いだままでいるとか耳にキスするとか。
高校生の頃の樹先輩は”穏やかな紳士”みたいだった。
今の樹は何て言うか、外国人みたい。

いや、決して嫌じゃないけどね。むしろ安心っていうか嬉しい気持ちが強いんだけど、あまりの違いに戸惑うこともある。
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