星空電車、恋電車
恋電車を降りて、学校までの緩やかな坂道をゆっくりと手を繋いで歩いていくと、あの頃の私がよみがえってきた。

部活終わりの下校時間が1番楽しかった。
自転車をひく樹と二人、この道を歩いた。学校から駅がもっと離れていればいいのにと何度思ったかわからない。

「樹センパイ」

繋いでいた手を離して立ち止まると樹も足を止めた。戸惑いが瞳に浮かんでいる。

「どうしたの、いきなり」

「樹センパイ」

あの頃を思い出し樹に向けて左手を出した。

「先輩、手を繋いでくれませんか」

あの頃言えなかった言葉。
今なら言える言葉。

何を言ってるのかって表情をした樹。
一歩下がってもう一度、「センパイ」って言うとやっと私の言いたいことがわかったらしい。

「おいで、ちー」

ここ数年呼ばれることのなかった愛称で私を呼び、私の左手に自らの右手を重ねてぎゅっと握ってくれた。

「・・・俺は自転車邪魔だなっていつも思ってた」
ちょっと照れたように目を細めて苦笑いをしてる。

「私は自転車だけじゃなくて京平先輩も邪魔だって思ってたけどね」

口調を後輩から妻に戻してつんっと口を尖らせると、ぷっと樹が吹き出した。

「それは俺も思ってた」

あははははっと二人で笑いながら再び歩きだす。

「きっと今頃くしゃみしてるね」

「だな」


私たちの目の前には長く続いている緩やかな坂道。
そこを上り切って右カーブを抜けると左手に正門が見える。

10年ぶりの母校。
樹という夫と共に私は戻って来た。


「千夏」

なあに?と夫の顔を覗き込む。

「これから流星群、たくさん見に行こうな」

「うん」

まずは新婚旅行。そしてすぐに樹の海外赴任先についていくことになっている。
海外に行く不安がないわけじゃない。でも樹と離れることはもう少しも考えられない。

「楽しみね」

私はふたりで見る星空を想像して期待に胸を震わせた。




ーーー終



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