星空電車、恋電車

もう一つの再会

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プラネタリウムに行ってから一ヶ月。
私は新しい出会いを求めて合コンに参加していたのだけれどーーー


「もうやめよっかな」
「まだ3回しか行ってないでしょ!千里の道も一歩から、だよ!」
弱気な私にユキの檄が飛ぶ。

待て待てユキ。
”千里の道も一歩から”ってことわざ、今のこの状況に合っている?

けらけらと隣でいづみが笑っている。
「合コンってそんなことわざが出てくるくらいの大プロジェクトなんだね」

「彼氏がいるいづみは余裕だろうけど、いない私たちには死活問題なのよ」
ムキになるユキの言葉に
「私は別に死活問題じゃないけど・・・」
と口を挟むと
「いいの!千夏は黙って。とにかく簡単にあきらめない!投げ出さない!」
と怒られた。

「ユキは理想が高すぎるんじゃないの?特に外見の」
いずみがボールペンをくるくる回しながらテーブルに置かれたユキのスマホを見る。

「それは私もそう思うよ。ユキはアイドル系イケメン好きなんだもん。そんなのそうそう身近にいないからね」
私もそう言いながらユキのスマホに視線を投げた。

「やだ、二人とも私の趣味に文句あるわけ?」
ユキがスマホを手に取って操作し始める。

「ああー、セイヤ君、ソラ君、アトム君、トーイ君、アクア君最高~」
ユキは度々、画面を眺めてはこうしてうっとりと呟く。

私といづみは顔を見合わせため息をついた。

「セイヤだのソラはいいとして、アトムやトーイとかアクアだなんて初めて聞いた時にはアニメキャラなのかと思ったわ」

「私もー」

「もうっ、セイヤ君もソラ君、アトム君、トーイ君、アクア君を知らないなんて非国民だよ、二人とも」
ユキはぷうっと頬を膨らませる。

「いや、デビュー前のアイドルなんて知ってる人の方が少ないからーーー」

「そんなことないもん!コンサートだってやってるし、この間の歌番組にも出てたもん!」

ユキの趣味はアイドルグループのバックで踊っているらしいデビュー前の男の子たちを愛でること。
アイドル予備軍とでもいえばいいのかな。彼らのことをやたらな言い方をするとユキに激怒されるので言えないがとにかくそんな若い男の子たちのファンなんだとか。
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