姫は王となる。



外に話が漏れないよう、王室の奥まで行くと足を止めた。

後ろから聞こえる足音で、風と老婆も付いてきていることがわかる。


「風…さっきの会議での話は何だ?」

背を向けたまま、風に問い掛けた。


「私は昨日、西国の王子カイトとの縁談話は検討の段階だと、お前も聞いていたはずだろう?」

後ろに振り返ると、真っ直ぐと風の目を見た。


「なぜ、大臣たちの前で言った?しかも、あのような言い方…縁談が決まったと思わせる言い方など、大臣たちが勘違いしていただろう」


西国の王子カイトとの縁談が成立すれば、後ろ楯に西国が付く。
そうすれば、今抱えている問題も解決するだろうなんて、その話を聞いて大臣たちが反対するわけがない。
むしろ、喜んでいた。



「あと、北国との国境の警備の話も私は何も聞いていない。風が、護衛兵を率いて行くことなど…」
「では、王様。他に何かお考えでもありますか?」





風は抑揚のない冷たい声で、私が喋っているのを遮った。



「王様、他に何か良い考えでも思いつきましたでしょうか?」




じっと、真っ直ぐに見返される。



「…っ」


その目は冷たく、一度も見たことがない風の表情。







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