お日様のとなり
……あのね、イチくん。
イチくんが私を引っ張って走ってくれた日のことを今でも思い出すんだよ。
あの日、イチくんが私を引っ張ってくれたから、私の世界には初めて色がついたの。
今は一人で走ってるけど、あの時のイチくんのスピードには到底敵いそうにもないけれど、大丈夫。きっと、辿り着ける……。
階段を駆け下りて、迷わず旧校舎の方に向かった。
渡り廊下を抜けると、旧校舎の廊下に見慣れないボードが立てかけられていて、思わず足を止めた。
両手を膝について息を整えながら、顔を上げる。
そこに広がっていたのは、写真部の展示。
紺色の布が掛けられたボードに、選び抜かれた写真が上下に二枚ずつ丁寧に飾られている。
その中には、みんなで海に行った時の写真もあって、懐かしさにまた泣きそうになりながら、順番にしっかりと目に焼き付けていく。
種類別にグルーピングされた展示の中の、人物写真の中には私が撮ったふうちゃんとお母さんの写真が飾られていて。
嗚咽が漏れそうになるのを手の平で押さえながら、また次の写真に視線を移した。
「やっと来たね」
廊下の向こうから声がしたと思えば、森園先輩が笑いながら私を見ていた。
「森園先輩、ごめんなさい、私……」
「みあなら絶対来てくれるって信じてたよ」
落ち着いた森園先輩の優しい声が静かに響く。
勝手にいなくなったのに、そんな私を咎めもせず、こうして私をまだ写真部の一員として扱い、作品を飾ってくれている。
そのことが嬉しくて、同じくらいに自分が情けなくて、涙が止まらなかった。