極上御曹司に求愛されています
「わ、私に声をかけてくれた……。夢みたい……」
小さなガッツポーズを作り、ぴょんぴょん跳ねる芹花に、悠生はおかしそうに笑い声を上げた。
「楓のファンなのか? だったらちゃんと紹介すれば良かったな」
「とんでもない。あんなキレイな人、緊張してまともに話せるとは思えません。見てるだけでいいんです。今日会えただけでもラッキーです」
「キレイ、だな。うん。仕事が楽しくて仕方がないようで、良かった」
興奮が醒めず落ち着かない芹花の手を取り、悠生はゆっくりと歩き出した。
「フランスに行ってたんですね。すごいなあ、実物は本当にキレイだった。あ、悠生さんとは学生時代のお友達かなにかですか?」
悠生について歩きながら、芹花はふと尋ねた。
「いや、仕事を始めてすぐの頃にジムで知り合ったんだ。ああ見えて、楓はマラソンが趣味でさ、モデルの仕事のためにも体を作りたかったのもあってジム通いしていたんだ」
「そう、ですか」
悠生の声は心なしか堅く、それ以上何も聞いてほしくないよう遠回しに言われたようだった。
ロビーを横切り地下の駐車場に向かいながら、芹花はつながれた手を見つめた。
芹花の歩幅に合わせて歩いてくれる悠生の隣は居心地がよく、気づかれないように横顔を見ることにも慣れてきた。
それどころか少しでも長く手をつないでいたくて、わざとゆっくりと歩いてみたり。
すれ違う女性たちが二度見するほど目立っている悠生の隣にいるのがなんの特徴もない自分でいいのかと悩まないわけではない。
顔だけでなく服装だってアマザンにふさわしいとは思えない。
悠生とはつり合っていないと納得しているし、周りからそう思われることも自覚している。
きっと、さっき会った楓のようにキレイな女性の方が悠生にはふさわしい。
けれど、一緒にいたい。この居心地がいい場所に少しでも長くいたい。
ブライダルフェアの夢見心地の雰囲気に感化され、おまけに竜崎楓という憧れの人気モデルに出会い、心はふわふわしたまま現実味もない。
つないだ悠生の手を見れば、いつの間にか恋人つなぎ。
視界にそれを捉えるたび、芹花の心はとくとく音を立てる。
ロビーを抜けた時、大きな窓からさっきまで二人が食事をしていた中庭が見えた。
既にブライダルフェアは終わっていたが、中庭の中央にある噴水はは鮮やかな色のライトで照らし出されていた。
水の動きに合わせて変わる照明の色や角度に二人して見入る。
「近くから見るより、ここから見る方がキレイに見えるな」
悠生の声に、芹花は頷いた。
「おいしい物があるとそれに夢中になっちゃうから、こんなにキレイだと気づかなかった」
周りを気にする余裕もなくおいしい食事を堪能していたことを、少し後悔した。