極上御曹司に求愛されています
悠生は、スタッフに囲まれ次第に近づいてくる楓を驚いた表情で見ている。
「悠生さん? あの、もしかして、知り合いですか?」
「あ? ああ、そうだな。楓とは、古い知り合いなんだ」
視線を楓に向けたまま、悠生は低い声で頷いた。
芹花の手を握る悠生の手に力が入り、芹花は顔をしかめた。
「悠生さん、あの」
戸惑う芹花に、悠生はハッとしたように「悪い」と呟いた。
緊張しているのか聞き慣れない悠生の低い声を耳にし、芹花は戸惑った。
「悠生よね? しばらくぶりね」
優しい声に視線を向ければ、竜崎楓が二人の前に立ち、笑顔を浮かべている。
フラットなバレエシューズを履いているのに、百八十センチ近くありそうな長身を見上げ、芹花は羨ましさにため息を吐いた。
「元気そうだな」
楓の明るい笑顔につられたのか、悠生も表情を和らげ、優しい声で答えた。
「最近、CMにも出てるし大活躍だな」
「ふふ。そうなの、大忙しで時差ボケもしょっちゅうなのよ。今もフランスから帰ってきてそのままチェックイン。明日のショーに呼ばれていてね」
「そうか。……良かったな、楽しそうで」
「うん。ありがと。悠生もこの間雑誌で見たわよ。一応一般人なのに、イケメンの御曹司さんは大変ね」
懐かしそうな表情で言葉を交わす美男美女の二人を見ながら、芹花は「眼福」と小さく呟いた。
モデルだからキレイなのか、キレイだからモデルなのかと興奮した頭の中は同じ言葉ばかりを繰り返している。
長い黒髪をポニーテールにし、白いロングコートを着た楓はすっぴんながらも輝いていて、妬むことすらできないほど美しい。
世界的なモデルと並んでも引けを取らない悠生もさすがだなと、ぼーっとしてしまう。
「楓、そろそろ行くわよ」
辺りを気にしながら、楓のスタッフらしい人が彼女を促した。
見れば、周囲の人たちも楓に気づいたのかざわざわしている。
スマホを構える者も増え、楓のスタッフたちが「早く行きましょう」と楓の背中を押した。
「じゃ、悠生、またね。あ、お邪魔してごめんなさいね」
慌ただしく立ち去りながら、楓は悠生と芹花にペコリと頭を下げた。
ほんの一瞬楓と視線が合った芹花は、つないでいた悠生の手を思わず振りほどき飛び上がった。