極上御曹司に求愛されています

「は? 当たり前です。私、こういうのに慣れてないんです」
 
図星を指された芹花は焦ったようにそう言って、悠生を睨んだ。

「前も言ったけど、それで睨んでるつもり? ただかわいいだけだぞ」
 
体を揺らして笑いながらも、芹花の肩に置いた手を離そうとしない悠生に、芹花は何故かホッとする。
きっと声と同じで本当に優しい人なんだろうと、芹花は感じた。
出会ってから何度もそう思ったが、わざわざ自分には関係がないのに何枚も写真を撮ってくれるほど温かい人だ。
知れば知るほどもっと近づいて、悠生のことを知りたくなる。
イケメンの御曹司という肩書だけでない、彼本来の姿を。

「これを綾子さんに送ったら、それこそダメ押しだな。俺と芹花はどう見ても結婚間近の恋人同士だ」

芹花に画面を見せながら、悠生はメッセージを打ち込んでいく。

【ブライダルフェア直後の芹花は感激のあまり言葉少なめ。ウェディングドレスの試着は後日の予定】

「送信。この写真で俺と芹花は完璧に恋人同士だな」
「それは、そうなんですけど」
 
写真だけを見れば、二人は結婚するのを楽しみにしている恋人同士のようだ。
悠生は綾子にそう思わせるためにこの写真を送ったのだろうが、本当にこれでいいのかと、芹花は複雑な気持ちになる。




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