極上御曹司に求愛されています

ちらりちらりと視線を向けるが、ムッとした表情を返され芹花は肩を落とした。
そして、ぼそぼそと話し始めた。

「修くんは大学時代につき合い始めて、就職してからも一年ほど付き合った恋人です。でも、同窓会で地元に帰った時に、たまたまスマホの写真を同級生に見られて……その中のひとりが来月の結婚式の新婦の礼美で。写真の修くんにひと目惚れしたらしくて私に内緒で彼に会いにいって。私はあっという間に修くんに別れようって言われて、そして礼美と付き合い出して」

過去を思い出せば、当時の苦しい感情が心に溢れ、まとまりのない言葉ばかりを口にしてしまう。
けれど、時間が経っているからだろうか、以前ほどの痛みや悲しみは感じなかった。

「披露宴なんて出たくない。けど、新婦は私の高校の友達で、おまけに両親が働く会社の社長の娘だから、気まずくなるわけにはいかないの」

話しているうちに、声高になる。
芹花は唇を引き締め、黙り込んだ。
自分を振った恋人のことなんて、相手が誰であろうと話したいわけがない。
とりたてて激しい恋愛感情があったわけではないが、順調な付き合いを続けていた修から突然「ほかに好きな女ができた」と言われ、一方的に別れを告げられた時の衝撃は言葉にできないほどだった。
おまけに修が好きになった礼美は芹花の地元の友達だ。
地元を離れても尚、連絡を取り合うほど親しい間柄ではなかったが、地元で小学校からずっと同じ学校に通ったのだ、顔見知り以上の付き合いはあった。
それに、礼美は芹花の両親が働く「小沢食品」の社長の一人娘で、町の誰もが知るお嬢様だ。

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