『The story of……』

「そういえば、上総さんとは前にグラウンドで出会したよね」


「うん。確かバドミントンのラケットを勝手に持ち出した女の子を注意してたね」



新学期が始まってすぐの頃。
使用申請を出さずに備品を持ち出した女の子たちに、注意する福士くんを見かけたことがある。



(あの時は同級生ながら威圧感がすごいなぁって思ったんだよね……)



「瑠戌は一見厳しくて誤解されやすいんだけど……ホントは思いやりのあるヤツだから」



確かあの時も、キツい言葉で萎縮してしまっていた女の子たちに、



「部活動の私物の盗難が流行ってたから、疑われないように注意してたんだよね?」



「よく覚えてるねっ」



こう言って、笑顔でフォローを入れたのが十二谷くんだった。



あの無表情の福士くんの隣に居るせいか、十二谷くんの笑顔は印象的で安心する。



「だからさ、上総さんもせっかく風紀委員に入ってくれたんだし仲良くしてやって」



「こちらこそ」



あの時も感じたけど、十二谷くんは福士くんの良き理解者で、福士くんをすごく信頼してる。
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