『The story of……』

(誰か居るのかな……)



恐る恐るドアの隙間から覗いた光景に、



「っ!?」




思わず言葉を失い、両手で口を覆った。




そこに居たのは幽霊とかお化けとか、そんなんじゃない。



わたしの予想を遥かに超える光景。




若い英語の非常勤講師と、男子生徒の濃厚な絡み合い。



そして何より目を疑ったのは、



(……十二谷、くん?)




その男子生徒が、他でも無い十二谷くんその人だったこと。



立ち去ろうと一歩二歩と後退りしたところで、



「先生? 今日はこれくらいで失礼します」


「えっ?」



「……悪戯猫が一匹、残っていたみたいなので」



(見つかった!?)




教室から漏れた声に、思わず震える足で無我夢中に廊下を走った。




階段の踊り場まで一気に駆け込ん瞬間、



「覗き見なんてお行儀悪いよ? 上総さん?」



いつもの優しい笑顔を浮かべた十二谷くんが居て、



両手を壁に付いた彼に、逃げ場を塞がれた。

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