『The story of……』
「うん。言わないよ」
「助かる」
(その代わり、出来るだけわたしも手伝お)
きっと言葉にすれば、福士くんは断る。
だから、今日みたいに偶然を装って手伝うことにしよう。
「それじゃ、お疲れ様」
「あぁ」
教室に一度戻ることを告げ、顧問に報告に向かった福士くんと別れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時刻は下校時間をギリギリ過ぎていた。
廊下や教室の電気もほとんどが消されて薄暗い。
(さっさとカバン取って帰ろ)
使い慣れた教室も時間が違うだけで、雰囲気は一変。
非常口のぼやけた緑色の光を頼りに机からカバンを取り、急ぎ足で廊下を歩いていた。
すると、
「……っぁ……」
(……何の声?)
途切れ途切れに聞こえる女性の高い声に、思わず足が止まった。
そこは二年四組の教室の前。
他と同じように電気は消えてるのに、確かに声は聞こえてくる。