聖なる告白
「ああ、この前山科さんには話したっけ。彼女も筋トレに興味があるのか、ずいぶん食い付いてきたなあ」


(沙織……あの子ってば、もしかして)


もしかしたら沙織は、ビーチを歩くアスリートボディが一平君だと気付いていたのかもしれない。いや、むしろ彼女が仕組んだのだ。この島で、この民宿で、私と一平君が出会うシチュエーションを。


――旅先で理想の男性と出会うなんて運命的じゃん。期待しちゃいなよ。


私がアウトドア派のスポーツマンタイプの男性が好みだと彼女は知っている。一平君が実はそうだと知って、わざわざ運命的な出会いを果たすよう演出した。

どうせすぐにばれるのに! でも……

ペットボトルをぎゅっと握りしめ、一平君を窺う。これまで、まったく気付かなかった。

強い意思を感じさせる大きな目。穏やかな言動からは考えられない、獰猛な体つき。何時間も泳ぎ続ける体力。すべてがドストライクだ。ときめきなどこれっぽっちも感じなかった同期の男に、今、急激に惹かれている。


「演出の勝利だわ……」

「何が?」


顔を近付けてくる一平君から、さっと目を逸らす。

色気がありすぎて正視できない。

沙織の罠とはいえ、一平君のカラダに一目惚れしたのは事実である。


(勇一君のことを言えないよ)


私こそ肉欲の塊だと、自覚した。
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