聖なる告白
「ところで山科さん。僕に宿を紹介してくれた時、君達も同じ日に泊まるって、どうして言わなかったの?」

「あっ、ああ……それは」


沙織は目を泳がせる。

彼女の企みに、一平君だけが気付いていない。


「君達が一緒なら、港まで車で送ったのに。電車は移動が大変だし、荷物も重かっただろ」


沙織は箸を取りつつ、へらへらと答えた。


「それはその、ほら、一平君がそんなふうに気を遣ってくれるから、黙ってたのよ。お世話をかけちゃ、悪いじゃない」


ちょっと苦しいが、筋の通った言いわけだ。

私はといえば、隣で見守るほかない。とりあえず、今は一平君に何も悟られたくなかった。


「ふうん、まあ、いいけど。僕らは同期なんだから、遠慮しないで頼ってくれよ」

「はーい」


沙織の軽い返事に一平君は少し不満そうにするが、それ以上追及せず食事を始めた。
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