触れられないけど、いいですか?
「わー。混んでますねぇ」
唇をムムッとへの字に曲げながら、隣に立つ後輩の鈴山(すずやま)さんがそう言った。
「今日は研修で、全国の支社の代表社員が本店ビルに集まってるらしいから」
「だからって皆、社員食堂でお昼食べなくてもいいのにー」
この高層ビルの社員用食堂は、普段は社員がお昼時に押し寄せても困らない位に広いのだけれど、そんな訳で今日だけはさすがに席に困って立ち尽くしている。
そんな時だった。
「さーくちゃん」
少し離れた場所から、聞き覚えのある声が私の名前を呼ぶ。
反射的に顔を上げると、そこにいたのは。
「霜月さん」
「席なくて困ってるの? ここ相席していいよ。二人座れるから」
軽ーい口調でそう言われ、正直一瞬躊躇ったものの、霜月さんは善意でそう言ってくれているのだろうし、彼の正面にはもう一人別の男性が座っていた為、特に気にすることなく「ありがとうございます」と答え、そのテーブルに向かおうとする。
が、一方足を踏み出したのとほぼ同時に、鈴山さんに腕を引っ張られる。そして。
「朝宮さん、総務の霜月さんと仲良かったんですか⁉︎ いつから⁉︎ 凄い‼︎」
興奮気味にそう聞かれ、思わず首を傾げてしまう。