触れられないけど、いいですか?
「仲良いって程ではない気が……ていうか鈴山さん、霜月さんのこと知ってるんだ?」

「なーに言ってるんですかッ‼︎」

ピシャリとしたツッコミと同時に、顔の前に人差し指を突き立てられ、思わず仰け反る。


「霜月さん、超美形の若手社員って社内で有名じゃないですか!」

「え、え? そうなの?」

「朝宮さんはそういう話、疎いですもんねー。イケメンというよりは、アイドル系の美少年顔ですが、女性社員の中では大人気です! もれなく私も!」

「鈴山さん、彼氏いるよね?」

「それはそれ、これはこれです! 社内でのときめきや目の保養が欲しいじゃないですか!
あッ、いつまでもこんなところに突っ立ってたら不審がられますね! では行きましょう、相席へ!」

まるで戦場へ向かうかのような意気込みと迫力でテーブルに向かっていく鈴山さん。とりあえず、私も彼女のその後ろ姿についていく。


テーブルには、霜月さんの隣に鈴山さんが座り、その正面に私が座る。


霜月さんと一緒にいた男性は、研究開発部に所属する黄瀬(きせ)さんという方らしい。オフィスで姿を見かけたことはあるけれど、お話しするのは今日が初めてだ。
黄瀬さんは、座っているから正確な身長は分からないけれど恐らく長身、そして細身。
切れ長の瞳に、黒縁の眼鏡を掛けている。
ルックスは霜月さんとは正反対という感じだけれど、話によると二人は同期で仲も良いらしい。
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