触れられないけど、いいですか?
私と鈴山さんが揃ってお弁当を広げていると、不意に黄瀬さんが私に話し掛けてくる。
「販売促進部の朝宮さん……だよね? もうすぐ結婚するって噂、ほんと?」
突然だったので一瞬きょとんとしてしまったものの、特に隠すことではない。退職時期もおおよそ決まっている為、部内の社員達には既に報告済みでもある。
「はい、そうなんです」
「へぇ。もしかして社内恋愛?」
「いえ、そうではないです」
「じゃあ、学生時代からずっと付き合ってた人とか?」
「あ、いえ……」
お見合い、というワードが出てこないところあたり、黄瀬さんは私が朝宮食品の家の娘だということは知らなそうだ。ちなみに鈴山さんも知らない。これに関しても特別隠しているという訳ではないのだけれど、かと言って自ら話し出すことでもなかった。
すると、はっきりしない私に代わるかのように、鈴山さんが声をあげる。
「お相手のこと、私が聞いても教えてくれないんですよー。年上の朗らかな人ってことしか」
それを聞いてまず反応したのは、黄瀬さんではなく霜月さんだった。
「へー、そうなんだぁ。俺も気になるなあ、さくちゃんの結婚相手」
普段と変わらない様子で笑いながら、そう言ってくる彼。
私の結婚相手のことならもう知ってるくせに何を……と一瞬思ってしまったけれど、黄瀬さんと鈴山さんに変に探りを入れられない為に自分も知らないふりをしてくれているのかなと思った。
「ええと、社内の人ではないですし、どんな人かは個人的なことなのであまり話さないようにしてるんです」
「販売促進部の朝宮さん……だよね? もうすぐ結婚するって噂、ほんと?」
突然だったので一瞬きょとんとしてしまったものの、特に隠すことではない。退職時期もおおよそ決まっている為、部内の社員達には既に報告済みでもある。
「はい、そうなんです」
「へぇ。もしかして社内恋愛?」
「いえ、そうではないです」
「じゃあ、学生時代からずっと付き合ってた人とか?」
「あ、いえ……」
お見合い、というワードが出てこないところあたり、黄瀬さんは私が朝宮食品の家の娘だということは知らなそうだ。ちなみに鈴山さんも知らない。これに関しても特別隠しているという訳ではないのだけれど、かと言って自ら話し出すことでもなかった。
すると、はっきりしない私に代わるかのように、鈴山さんが声をあげる。
「お相手のこと、私が聞いても教えてくれないんですよー。年上の朗らかな人ってことしか」
それを聞いてまず反応したのは、黄瀬さんではなく霜月さんだった。
「へー、そうなんだぁ。俺も気になるなあ、さくちゃんの結婚相手」
普段と変わらない様子で笑いながら、そう言ってくる彼。
私の結婚相手のことならもう知ってるくせに何を……と一瞬思ってしまったけれど、黄瀬さんと鈴山さんに変に探りを入れられない為に自分も知らないふりをしてくれているのかなと思った。
「ええと、社内の人ではないですし、どんな人かは個人的なことなのであまり話さないようにしてるんです」