触れられないけど、いいですか?
「……え?」
聞き間違い、かな? 本気、とか諦めない、とか聞こえたような……。
「えーと」
「聞き間違いじゃないからな」
「えっ」
聞き間違いじゃなかったことにも、心の中を読まれたことにも驚く。霜月さんも、翔君の様なエスパーなのだろうか。
って、そんなことより。
「し、霜月さん。一体何の冗談……」
聞き間違いじゃないのなら冗談に決まってる。だってまさか、霜月さんが私のことをそんな風に見てるなんて……。
「本当だよ。綺麗な外見も好みだけど、しっかりしてるようで実は隙だらけなとことか、超そそられるし」
「そ、そそ……?」
「さくちゃんだって、俺にしておいた方がいいんじゃない?」
それってどういうーーと聞き返すより先に、霜月さんが顔をグッと近付けてくる。
キスされそうーーと危機を感じた私は彼を突き飛ばし、エレベーターの開ボタンを押してそこから飛び出した。
そのまま階段で全力疾走でオフィスまで戻ったから、その後の霜月さんの様子は知らない。
いくら、彼には触れるのが平気とはいえ、さっきの霜月さんは正直少し怖かった……。