触れられないけど、いいですか?
「あ……」

しまった。私、なんてことを……。


「す、すみません! 私……!」

「いえ、俺の方こそ急にすみません」

そう答える翔さんの表情はあくまで笑顔で、怒っている様子はなさそうだけれど……。


どうしよう、気まずい。

翔さんが悪い訳ではない。全部、私に原因がある。

ずっと誰にも隠してきたことだけれど、誤解されたくないから話したい。結婚の為に翔さんに嫌われたくないからとかではなく、単純に、私の勝手な事情で彼の好意を拒否してしまったことを謝りたいから。


だけど……


「あ。あっちに父さん達がいますね」

「え?」

「さくらさんのご両親もいます。あちらも四人で庭園の桜を見ているみたいですね。合流しましょう。そして、部屋に戻ったら美味しい料理を皆で食べましょう」


笑顔でそう言って、彼はそちらの方へと歩いていってしまった。


謝れなかった……。



その後も、一見和やかな雰囲気で会食は進み、そう遅くない時間に解散となった。


今日のお返事はお互いにまた改めて、ということになったけれど、私は正直、断られてしまうだろうなと感じていた。だってその位、失礼なことをしてしまったから……。
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