触れられないけど、いいですか?

しばらくして、家の前まで翔君が車で迎えに来てくれて、それに乗り込んだ。
もうなかなか遅い時間だった為、普段ならばこんな時刻に外出だなんて父が絶対に許さないけれど、今は二人でじっくりと今後について話していくべきだと父は言ってくれた。


翔君の運転で、着いた先はあの公園。
大事な話をするのに相応しい場所はきっといくらでもあるけれど、私達にとってはここが一番落ち着く場所だと、車の助手席に座りながら心の中で思っていた。
公園に行こう、と言った訳ではないのに、翔君が自らの判断でここに来てくれたのが本当に嬉しい。



「優香から聞いたよ。あの霜月君を、さくらの婚約者にさせたってこと」

錆びれたフェンス越しに、その向こうにある眩い夜景を見つめながら翔君は言った。

私も同じ様に景色に視線を向けながら、その言葉に答える。


「やっぱり、もう聞いてたんだね。ちゃんと自分の口から話さなきゃと思ってたんだけど……」

「大丈夫。そんなこと気にしないで」

「優香さんから直接聞いたっていうのは、意外だったかも。普通、陰でそういう計画立ててたことは黙っていそうなものなのに」

「昔から馬鹿正直なんだよ、あいつ」


……不思議。あんなことがあった後なのに、私達、いつもみたいに自然に話してる。


きっと、お互いを信じ合っているから……


ううん、

好き合っているから。


だからこんなことがあっても動じないんだと思ったら、嬉しく思った。
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