触れられないけど、いいですか?
「どうしても嫌なら、断ったって良いのよ。断ったからといって、何がどうなる訳ではないのだから」

母は、私が政略結婚を嫌がっていると思っているのかもしれない。母の気遣いには素直に嬉しくなるけれど、


「ううん、違うよ。嫌な訳じゃ、ないよ」

私は首を横に振る。そう、嫌な訳じゃない。翔さんが私を選んでくれたことも、驚いてはいるけれど嬉しくもある。


それでも、だから結婚しますと即答出来ない自分もいる。


……それはきっと、翔さんが優しい人だったから。私に好きになってもらえるように頑張るだなんて言うから……。


その優しさが、私にとっては苦しいものなのだ。



「そうだ。明日、二人で食事でもしてきたらどう?」

名案を思いついたと言わんばかりの様子で母がそう言う。


「食事?」

「そうよ。二人きりで会ったら、また分かることもあるんじゃないかしら? ねえ、お父さん?」

母の提案に、父も「まあ、良いんじゃないか」と返す。


「お返事する前に二人で会うなんて、あまり聞いたことないけど……」

「問題ないわよ。デートだと思って楽しんできなさい」

「そうだな。じゃあ、父さんの方から連絡しておこう」


……その後父を通して、翔さんからも明日の食事についてOKのお返事をいただいた。


デートだなんて……母が変なことを言うせいで意識してしまうじゃないか。


……それよりも、翔さんに今日のことをきちんと謝らなければ……。
< 15 / 206 >

この作品をシェア

pagetop