触れられないけど、いいですか?
頂上へ到達したことを知らせる電子音が、車内で聞こえた。

改めて景色に目を向けると、一層と見応えのある景色が眼前に広がる。


「翔君、景色凄いね」

私は感動気味にそう言うけれど……。


「ん? ちょっとここからじゃよく見えない」

「え? そんなことないでしょ。そっちの窓からでも景色見えるでしょ」

「いや、なんか見づらいんだよね。ちょっとそっち行っていい?」

よく分からないことを言いながら翔君はそっと席を立ち、私の隣に腰掛けーー


ながら、キスをしてきた。
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