触れられないけど、いいですか?
「じゃあ、私達は一旦外に出ているわね。お邪魔になってしまうから」

母がそんなことを言い出し、父を連れて退出してしまった。部屋の中には、私と翔君の二人きりになる。


「えーと……とりあえず座る?」

さっきまで母が使っていた丸椅子を指差し、翔君にも座ってもらう。

お互い椅子に腰掛けながら向かい合うも……こ 改まると何を話したらいいか分からなくなるから不思議だ。
不思議なだけならまだしも、こうして近くで見ると、今日の彼のカッコ良さは異常とも言えるくらいに眩しすぎる。

父の意向で、入籍も同居も、今日の結婚式が終わってからなので、私の姓はまだ朝宮だし、翔君とは一緒に暮らしてもいない。
それでも、これから夫婦としてずっと暮らしていくのに、目の前に彼が座っているだけでこんなにもドキドキしてしまって、私の心臓はこの先、大丈夫だろうか。
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