触れられないけど、いいですか?
「え、え?」

「婚約指輪が完成したんだ」


婚約指輪? 勿論嬉しいけれど、まさかこんなに早くもらえるなんて思っていなかったから驚きを隠せない。

そう言えば一週間前、霜月さんが私に『指輪してないからフリーかと思った』と言ったことと、それに対して翔君が〝さくらに変な虫が近寄らないように早く指輪を買わないと〟と言ったことを思い出した。あれからまだ一週間しか経っていないのに、もう指輪が完成したの?


「もっと前から用意してたよ?」

またしても、彼は私の心の中を読み取る。本当にエスパーなんじゃないだろうか。


「でも、いくらエスパーでも私のサイズ知らないよね?」

「エスパー? サイズなら、さくらのお母さんに協力してもらったよ」

「お母さん……?」

そう言えば以前お母さんに、〝これから結婚指輪の用意をしなきゃいけないのだから、自分の左手の薬指のサイズくらい事前に知っておかなきゃね〟と言われ、サイズを測られたことがあったっけ。あの時既に、翔君の計画が始まっていたのか……。
エスパー兼、策士でもあるなと感じた。


彼はきっと、私の心の中なんて全てお見通しなんじゃない?と思う。
だって、彼が開けた箱の中には、とても私好みの可愛い指輪が。
立て爪で大きなダイヤを支えていて、見ているだけでも幸せな気分になる。
……ううん、きっとどんなデザインだって、嬉しくて堪らない。私、凄く幸せだ。
< 77 / 206 >

この作品をシェア

pagetop