昭和生まれのサンタクロース
《本日、平成最後のクリスマス。
天候にも恵まれ、お出かけ日和。》

と、一日の2/3が過ぎ去った今もクリスマス一色のニュース。

「あー、寒い寒い。」

おばあさんは、両手にレジ袋を食い込ませながら帰宅した。

「寒いなー。」

テレビから一瞬だけ目を外して返事したおじいさん。

同時に少し暖房の温度を上げた。

「よいしょ。」

と、頑張った自分を労いつつ荷物をキッチンへ。

冷蔵庫からアイスを取っていつものソファに身体を預けた。

「ふぅー。」

御歳83、駅前のスーパーまで歩くのでも一苦労。

そんなおばあさんに、"お疲れ様"と何度も言おうとしたがなかなか口には出せず心の中に留めた。

「どうだった?混んでたか?」

「もう、すごい人でしたよ。」

「そうだろうな。風も冷たかっただろ。」

「ええ、手袋してても寒くて寒くて。」

「そうだよな。」

とテンポよく会話が続くが、おじいさんは何やら忙しない。

当然、長い付き合いのおばあさんはその様子に気づいています。

「トイレなら早めに行ってきなさいよ。」

「あー、いや、その、」

普段はハッキリしてる性格なのだが、今日のおじいさんは少し変だ。

「なんですか?」

おばあさんの追及へは答えず、2枚の紙をテーブルに置いた。

「東京タワー?」

訳も分からず、気味の悪さを感じながらメガネ越しにそれを見やる。

「良かったら行かないか?」

ようやく出てきたお誘いの言葉。

「今からですか?」

「ああ。」

おばあさんは色んな意味で驚いている。

「分かりました。準備してきますね。」

足と心を踊らせ自室へ向かったおばあさん。

おじいさんが心変わりしてしまわないよう、早急に準備します。
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